Ridley Helium SLX リムブレーキ 12000km走行インプレ

Helium SLXを乗り始めて1年ほど経ちましたが、あっという間に12000km走ってしまいました。一言で言えば、メチャクチャ良いフレーム!です。乗り込めば乗り込むほど、どんどん気に入ってしまいました。

最初にハイエンドフレームに対して抱いていたイメージは軽いけど硬い、パワー伝達効率は良いだろうけど疲れるんだろうな、という感じでした。しかし実際はミドルグレードの2012年TCR ADVANCED比でパワーも伝わるし乗り心地も良い。オーリンズサスペンションが入っているわけでもないカーボンの塊でこれが両立しているのが不思議で仕方がないのですが、乗ってみるとそうなのです。TCRはT700(=24T)のカーボンしか使っていないのに対し、Helium SLXは60T/40T/30Tと異なる弾性のカーボンを使用し、BB周りはボリューミーでシートステーは極端に細かったりするのですが、この辺に秘密がありそうです。

考えてみればHelium SLX含めハイエンドフレームはワールドツアーを走るために作られたフレームであり、ツール・ド・フランスも走るわけです。ツール・ド・フランスは23日間で休息日は2日、3300mも走る過酷なレースで、パワー伝達ばかり重視したら鍛えているプロ選手といえど体に負担がかかってしまいます。距離が長いだけでなくパヴェ(石畳セクター)もあり、乗り心地や脚へ優しさなど疲労軽減もツールを走るハイエンドだからこそ重要な要素になってきます。パワー伝達、乗り心地を高次元でバランスさせたのがハイエンドフレームで、決して硬いだけではないのです。中にはパワー伝達の方に傾けて硬くて脚に来るハイエンドフレームもあるでしょうけど、Helium SLXに関して言えばパワー伝達・乗り心地共にバランスよく高次元に両立していて重量も軽く、ミドルグレードのTCRよりも全てが上回っています。初心者がいきなり乗っても大丈夫でしょうね。よく初心者はハイエンドやめとけなんて言いますが、ハイエンドは乗り心地も重視してあるハズなので、Helium SLXのようにバランス型のであればむしろ初心者にいきなりハイエンドはオススメできるのではないでしょうか。

まず平坦ですが、乗り換えて最初に強めにパワー入れた瞬間に、あれ全然違うわでした。TCR比で踏めばスーッと進みます。そして振動もよく吸収してくれて乗り心地が良いです。Helium SLXはクライミングバイクと言われていますが、平坦でも楽しいです。登りはシッティングも良いのですが、特にダンシングで気持ちよくグングン進みます。TCR比で100gぐらいじゃ大差ないだろうなと思っていた軽さも実感できます。但しこの辺はあくまで乗って感じたことで、ヒルクライムのタイムがいきなり縮んだとかはありませんでした。ただロングライドで楽になったというのは確実にありました。ポタリングでも乗り心地よいので恩恵あります。

褒めてばかりではなんなので、短所っぽいところも。平坦でペダリングが雑過ぎると、TCR比でちょっとリアが若干ゆらゆらするような感触もあります。この辺はシートステーが流行りのオフセットありのドロップシートステーではなくクラシカルなスタイルで後ろ三角が大きかったり、シートステーが極細なのも原因かもしれません。フレームサイズをTCRの時のXXS(440)に比べてHelium SLXはXS(480)と大きくしたのも影響していそうです、これも後ろ三角が大きくなる要因。ちょっと気を付けて回してやれば、綺麗に前に進んでいってくれます。

下りはブレーキング時TCR比でフロント周りに若干の頼りなさがあります。ジャイアントに乗っている時はフロントフォークのコラム径が特殊な規格のOD2(1-1/4インチ規格31.8mm)でステム交換の選択肢が少なくてなんだかなー、独自規格にするなよなんて思いましたが、一般的なオーバーサイズ(1-1/8インチ規格28.6mm)のHelium SLXに乗り換えてみるとOD2の良さも分かりました。少しだけ太い直径のOver Drive2にはちゃんと意味がありました。まあオーバーサイズのHelium SLXでもフロントフォークに必要十分な剛性はありますし、この辺は軽さとトレードオフでしょうね。

コンポは機械式9100デュラで組んで、ホイールは最初ロード再開直後だったということもありフロントはストレートプルでTNIのAL22W手組、リアはALX473にしました。しかし後からレーゼロやSpeed 40Cを履いてみてから思ったのは、このフレームに合うホイールは最低でもゾンダやレーシング3以上だということ。一番合うのはカーボンホイール。ALX473ではフレームの剛性にホイールが負けていて何だかチグハグな感じがありました。レーゼロで剛性はフレームとバランスが出て、Speed 40Cで更に一体感が増しました。ツールではBORA ONEでプロがそのまま乗っていたわけで、何だか納得してしまいました。タイヤは28Cまで対応しているようですが、23Cよりも25Cの方があっていました。C15レーゼロでも登り・下り・平坦トータルなら25C履いた方がいいですね。登りのみなら23Cですが。

総評としては何でもこなせて初心者からプロまで乗れる、ヒルクライムレースもロードレースもロングライドもこなせる万能フレームです。エアロ性能はフロントフォークの付け根ちょっと頑張ってるかなぐらいであまりありませんが、クラシカルな形状では完成度高いフレームです。リムブレーキの中では設計が新しいというか、最終設計モデルで太めのタイヤが入るのもいいですね(公称28Cまで)。10年後には、リムブレーキ史上最高のフレームセットの一つだったとか伝説のように語られているかもしせません。