ISMサドルのススメ&選び方 PN3.1 インプレッション

自転車のサドルなんて詰まるところ合うか合わないかで、それは地面からお尻の間全てのものの組み合わせ・・・路面、フレーム、シートポスト、サドル、レーパンのパッド、ポジションという何通りもある組み合わせで決まるわけで、正解は人それぞれ。おすすめも何もないのですが、それだけにサドル沼なんて言われます。

自分の場合、純正から最初に交換したサドルは何となく送料調整で買ったwiggleブランドCOSINEのTIエンデュランスサドルでした。座面が平らなメリダRIDE80純正サドルと比べると真ん中に溝があって、そのせいか股間(尿道・会陰部)が痛くない。ということは、もっと真ん中の溝が広かったり穴が開いてたりするともっと楽になるのか?と思い、真ん中の溝が深かったり、穴が広いサドルを物色。真上からのサドルの写真を重ね合わせたりしつつ、これだ!と次に買ったのはSpecializedのPower Arc Expert。当時としては穴が一番広い部類だったのと、ダンシングに切り替えたりの時に引っかからない方がいいかなとショートサドルを購入。しばらくは満足して年間17000km走ったり、600kmブルべを走り切ったりしました。

しかしロードバイク初心者を脱却して徐々にハンドルを下げてポジションが変わってくるつれ、パワーサドルでも会陰部の圧迫感が気になってきました。もっと圧迫感がない、痛くない良いものがあるのでは?と探してみて気になったのがISMサドル。まず穴が圧倒的に広い、穴が開いているというか穴ですらなく、先が割れてます。Power Arc Expertを買った時もですが、穴が開いてりゃ圧迫するものがないんだから痛みも減るだろみたいな超単純な思い付きで購入検討しました。しかし一口にISMサドルと言っても種類が多い。

モデル パッド 重量 レール材質 サイズ フック
PN4.1 40 295g CrMoレール 255×125mm なし
PN4.0 30 256g ステンレススチール
ALLOYレール
255×125mm なし
PN3.1 40 292g CrMoレール 255×120mm なし
PN3.0 30 255g ステンレススチール 255×120mm なし
PS3.0 カーボン なし 154g カーボン 255×120mm なり
PN2.1 40 358g CrMoレール 270×120mm あり
PN1.1 40 386g サテンスチールレール 275×110mm なし
PN1.0 Attack 25 316g Ti合金レール  275×110mm なし
PL1.1 Prologue 30 340g CrMoレール 275×135mm なし
PL1.0 Breakaway 30 318g Ti合金レール 275×135mm なし
PS2.0 Road 30 310g CrMoレール 245×130mm あり
PS1.1 30 310g CrMoレール 250×130mm あり
PS1.0 Time Trial 15 272g Ti合金レール 250×130mm あり
PS1.0 CR 15 295g CrMoレール 250×130mm あり
PR3.0 Typhoon 60 360g SSレール 235×145mm あり
PR2.0 40 370g サテンスチールレール  250×130mm あり

本国HPのISMサドルの選び方。元々ISMサドルはトライアスロン向けのサドルで、トランジットで引っ掛けるためのフックが付いています。しかしフックがあるとサドルバッグが付けにくいのでフックがあるモデルをまず除外。フック部分を加工してサドルバッグを付けられるようにする方法もあるようなのですが、最初からフック無しのモデルもあるのでフック無しから選ぶことにします。先が割れているせいなのか、平地中心のトライアスロン用せいなのかISMサドルは全体的に重量が重め。パッド有りで軽いPN3.0にしてみました。

まずセッティング。これがISMサドルでは大事です。一般的なサドルでもセッティングは大事ですが、セッティング方法が一般的なサドルと大きく異なるという意味で大事です。

簡単に言えば、一般的なサドルの着座位置より前に座る、そのために一般的なサドルよりも後ろにセッティングする、そのためにセットバックが大きいシートポストに場合によっては変更する必要があります。若干前下がりにすると良い具合になります。後ろの広大な座面は無視して、割れてる位置にちょこんとお尻をのせるイメージ。前乗りです。

※ISM本国HPより。

自分の場合は25mmセットバックのシートポストにMAX後退させてISMシートを取り付けています。MAX後退はシートポストメーカー的には非推奨の取り付け方ですが、クロモリレールのISMシートで前乗りする分にはモーメントがそれ程かからないので問題ないと思います。ちなみに一般的なサドル、例えばセライタリアのSP-01であれば自分の場合セットバック0mmのサドルで中央ぐらいの取り付けで丁度よいのですが、ISMだと25mmセットバックのMAX後退で丁度よくなります。そのぐらい一般的なサドルと付ける位置が違います。

インプレ。自分には凄く合っていた!以上。で終わってしまうのですが色々書いてみると、まず股間、会陰部・尿道の痛みがPower Arcより更になくなりました。TTサドルだからか、TTポジションが取りやすいです。ロングライドではPower Arcも痛みが出にくいサドルでしたが、さらに出にくいサドルでした。600kmブルべもいけます。先割れ構造のせいもありますが、座面が柔らかいせいもあるでしょうね。乗り心地が凄く良いです。ISMサドルの30とか40とかの数字は大きいほどソフトなパッドが入っているのですが、PN3.1の30は各社がロングライド向けとして出しているサドルよりも柔らかいです。でも柔らかいのにパワーが逃げていくような感じは不思議とありません。坂でも力強く登れます。まあ合っているからそうなるわけで、詰まるところサドルってホント偶然合うサドルに出会うか出会わないかってだけです。それだけに色々試したくなって沼なわけですが。

褒めてばかりでもなので悪いところを。重量が252gと重いです。191gのセライタリアのSP-01 BOOST Ti316 スーパーフローに交換してみたら、ダンシング時にメチャ軽い。61g差でもかなり違います。支点となる地面からは距離があるのでモーメントにすると61gでも結構な差になっているのでしょうね。バイクを振るような走りを多用するならISMサドルはあまりよくないかもしれません。

余談ですがこのセライタリアのSP-01 BOOST Ti316 スーパーフローに交換した時の話。このサドルに興味を持ったきっかけはPower Arc ExpertやISMサドルを検討した時と同様、真ん中に派手に穴が開いているからです。そして前方が割れているISMが良かったので、後方が割れてるSP-01はどうなんだろう?と。しかし結論から言うと全く合いませんでした。SP-01は座面が尻や腿の付け根に刺さるような感覚があり、乗っていられません。穴が広ければ単位面積あたりの力も増すわけで、圧力が高くなります。形状が合っている穴開きサドルなら尿道や会陰部の圧力を逃がす恩恵だけ享受できますが、形状が合わない穴開きサドルだと尻や腿に刺さります。

何故合わなかったのか考察してみると、恐らく一番の原因はSP-01は座面がほぼフラットだということ。今まで合うと感じたPower Arc Expertはスペシャ得意のBody Geometryで曲線形状、ISMのPN3.0も前が下がっています。

SP-01もこのぐらい極端に前下がりにセッティングするとそこそこ悪くないのですが、それでもそこそこ悪くない程度でISMの方が遥かに良いです。逆に言えば、フラット座面が合っていて前下がりや曲面になっている座面のサドルが合わない人にとっては、ISMも合わない可能性が高いでしょうね。

選び方としては、幅143mmのパワーサドルから幅120mmのISMサドルでも問題なしなので、幅はあまり気にする必要なかったです。表記よりも広めに感じます。ただ後発モデルほど幅が広く絞り込まれた形状になっているので、その方が合う人が多いのかもしれません。重さについてはサドルの場合50gでもダンシング時に差を感じるので、バイクを振ってダンシングするのを多用するライダーには合わないかもしれません。重量は全モデル重い傾向。30でもパッドは十分厚めなので、一般的なサドルからの交換であればパッド30以下でなるべく軽いモデルから試すのをお勧めします。敢えて言うならばPERFORMANCE NARROWに属するモデルがISMサドルの中ではロード向きです。太腿のクリアランスが広く、ポジションの自由度も高く、軽くてパッドも適量です。PN3.0、PN4.0あたり。

まあほんとにサドル結局合うか合わないかというだけなんですが、今のところ自分にとってはISMが最高のサドルです。若干幅広になった最新モデルのPN4.0や、クッションが更に柔らかい40のPN4.1もPBP向けに試してみようかなと思っています。